『幸せ』
「あなたには幸せになってほしい」
彼がいなくなった後、何人かからそう言われた。
私はただ、愛想笑いを浮かべて「ありがとうございます」としか言えなかった。
「彼のいないこの世からいなくなることが私の幸せです」
そう本音を言ったらどうなっていただろう。
『幸せ』になることを許してくれる人は何人いただろう。
一人もいないだろうな、多分。
『幸せ』の定義は人によって全然違う。
『幸せ』にどう頑張ってもなれない人もいるだろうし、一般的に許されないことをするしか『幸せ』になれない人もいるかもしれない。
まあ、今の私には両方ともあてはまるが。
多分私はこれから嬉しいとか楽しいとか感じることはあったとしても、『幸せ』と感じることはないと思う。多分、一生。
私が幸せになるには彼に戻ってきてもらうしかない。
でもそれは不可能だから。
『幸せになって』という言葉を言う時は慎重にならなくてはいけないな、と思う。
重い言葉なんだなと彼がいなくなって知ったから。
私はもう『幸せ』にはなれない。
別にそれはいい。
ただこれからも生きていかなくてはいけないのであれば、穏やかに過ごしたいとは思う。