いつかあなたに逢いたい

2015年12月に6年付き合っていた最愛の彼を喪いました。
正直どう生きていったら良いのかわからないまま・・・今を過ごしています。

一緒に・・たくさん観た

彼が一人暮らしを始めた2014年5月。
どうしても一緒にやりたいことがあった。
彼が一人暮らしをしないとできないこと。
それは一緒にパソコンで動画を観たり、DVDを観たりすること。


え?って思われるかもしれない。
でも彼は車椅子だったので、漫画喫茶等にはそう簡単には入れない。
何かを共有して観るということに、何となく憧れていた。
実際、彼の部屋でまったりしていた時は映画のDVDを観ることが多かった。
パソコンでYouTubuを観たり。
ジャンルはアニメとか、コメディとか、動物動画とか。
時には手作りの料理とかお菓子を食べながら。


彼と私の好きなもの。
それを一緒に観て、お互いの感想を言い合って。
何でもない日常の一コマだけど、本当に穏やかで幸せな時間だったと思う。
そういえば死別系のアニメを観た時、私が泣いてしまったこともあったっけ。
彼はフィクションだから・・と泣いてはいなかったけれど、それが実際に私達の身に起こってしまった今、どう思っているんだろう。
ラブコメディとか観た時は、自然に手を繋いでいたっけ。
普通のコメディを観た時は、お互い微妙に笑いのツボが違って、それもまた面白くなって2人で顔を見合わせて笑ったりとか。
本当に思い返してみると、いろいろなことがあったなぁ。


こんな風に何気ない日常がずっと続くんだと思ってた。
結婚した後、何年経っても。
もう、叶わないことだけれどね。
日常が叩き壊されるのは一瞬なんだって、あの時の私は知らなかった。


彼がいなくなって1週間後。
彼の部屋である遺品をみつけた。
海外のB級パニック映画のDVD。多分、私のために買ったものだ。
一緒に観ようと思っていたんだろう。
そのDVDは今、私の部屋にある。
でも何となく観ることができていない。
いつか・・観られる日が来るんだろうか。

薬局へ行って

彼は毎日医療行為を行う必要があった。
そのためしょっちゅう薬局に行き、医療品を買う必要があった。
地元には薬局がいくつかあったのだが、『何曜日にどこの薬局がセールしているか』『何曜日に何が安く売られる傾向があるか』なんてことをよく知っていた。
そこらの主婦より情報通だったかもしれない。


デートの時も、よく一緒に買い物につきあったっけ。
どうしても医療品は箱買いになることが多い。
買い物カートも車椅子を漕ぎながらだと、なかなか厳しいしね。
そこは私が、自慢の(女子にしては)怪力で荷物を持っていた。
彼は最初は申し訳なさそうにしていた。
「ごめんな、ナナドゴブ。こんな小間使いみたいなことさせて。荷物も持ってもらっちゃって。彼女の荷物を持つどころか、逆になってるしね」なんて。
「いやいや、自分の荷物くらい自分で持つよ!その心遣いは嬉しいけど!というより全然負担になんか思っていないしね。むしろ役に立って嬉しいよ!」なんて言ったら嬉しそうにはにかんでいたっけ。
そしてその後からは遠慮なく誘ってくれたっけ。
彼の生活に関われている気がして、嬉しかったのを覚えている。



今日薬局に買い物に行って、こんな些細なやりとりを思い出した。
そしてふっと我にかえる。
あの頃は、ごく自然に誰かのために何かをできていたな・・と。
今は、できていない気がする。
自分のことで精一杯で、周りが全く見えていなかった。
そのせいで、人を傷つけてしまったこともあった。
原因は多々ある。ありすぎる。
自分を冷静にみつめると、最近ひどすぎた。
自分の醜い部分をみるのはすごく辛いけれど、そんなことも言ってられない。
これからは自分の感情で突き進む人ではなく、相手のことをしっかり考えられる人になりたい。
そう、改めて思った。

車の中で

デートをする時は彼が運転することが圧倒的に多かった。
彼は「自分の車の方が乗り降りが楽だし、車椅子も入れたり出したりしやすいから大丈夫だよ」と言っていたな。
私の車は車高が高く、乗り降りするにはトランスファーボードを使っていたっけ、そういえば。
なので申し訳ないな・・と思いつつ、いつも車に乗せてもらっていた。


やっぱりそれだけ車に乗せてもらっていると、長距離も移動することがあるし、私も疲れてることがあるし、どうしても助手席で寝てしまうことがある。
本当に申し訳なかった。
6年間のうち寝てしまったのは、私が覚えているだけで3~5回ほど。
気づいたら寝ていてかなりの距離を移動していて、私は彼に申し訳なくて謝った。
彼が運転してくれているのに。
でも彼は”いや~あまりに気持ち良さそうに寝ているから起こせなくてww”なんて笑っていたな。
その時は「もー!!」なんて言っていたけれど、彼なりの優しさなんだろうな、きっと。
だって嫌な気はしなかったから。


車の中で寝てしまった件で、一回だけとても印象深かった時がある。
その日はショッピングをして疲れてしまっていた。
この日だけは彼の承諾をとり、シートを倒して眠ってしまった。
ただ完全には寝付けず、眠っていて目は開けられないけれど、車が走っているのはなんとなくわかる”半覚半眠”のような状態になっていた。
だから、”あ、今信号を曲がったかな”なんてことぐらいはわかった。
そして・・隣からたまに感じる視線。
彼だ。
信号で停まるたびにこちらに目を向けているのがわかる。
でもすごく優しい視線。
私は人の視線に敏感で、普段は見られることに抵抗があるのだけれども、その時は全然きにならず、むしろ心地よかった。
”あんまり見ないでよ~”なんて思いつつ、目を開ける気力がなかったので、その心地よい感覚に身を委ねてしまった。


あとで訊いてみたらやっぱり彼は見ていたらしい。
「寝顔が可愛くてついww」なんて笑っていたけれど、あの時の視線は何ていうか、愛おしいものを見る視線だっていうのは私もわかったので、かなり気恥ずかしかったのを覚えている。