彼の手、私の手
私は数年前まで、ハンドクリームを使ったことがなかった。
というより、手が乾燥しなかった。
それが仕事を始めてから、まずは手の甲が乾燥するようになり、ついに今年は掌や指先も乾燥するようになってきた。
ちょっとハンドクリームを塗らなかったらすぐにカサカサになり皮が白く剥ける。
今までは手の甲のみハンドクリームを塗っていたので、ベトつき等は気にならなかったが、今年になって初めて掌にハンドクリームを塗った時の気持ち悪さを知った。
ただ、ハンドクリームに今まで疎かったので、どれがサラッとしたつけ心地かわからない。当分今までので我慢しよう。
でも、自分のカサカサの手を触っていると、彼の手の感触を思い出す。
彼も車椅子をこいでいたから、いつも手はカサカサしていた。
カサカサしているけれど、温かくて大きな手。指の長い綺麗な手。
大好きだったあの手。いや、彼の手だから好きなのかな。
手を繋いだ時の感触は今でももちろんはっきり覚えている。
何千人、何万人の手の中からでも、私は彼の手を見分ける自信がある。
ふぅ、ノロケのようになってだいぶ話がそれた。
要するに、私は彼の手を含めて彼が大好きだ。
もう一度、手を繋いで歩きたい。
そのためにも自分の手の手入れはちゃんとしとかないと。
でも時々カサカサにして、彼の手を思い出すのもいいかもな、なんてちょっと変態ぽいことも考えている。