いつかあなたに逢いたい

2015年12月に6年付き合っていた最愛の彼を喪いました。
正直どう生きていったら良いのかわからないまま・・・今を過ごしています。

対面(2)

ICUを出た後すぐに帰る気にはなれず、1階にある病院の売店で飲み物を買い、椅子に座ってぼーっとしていた。

何でこんなことになったんだろう、どうして彼が?とかそんなことばかり考えていた。


そして手持ちの携帯で脳出血やくも膜下出血のことについて調べる。

今の彼の状態と照らし合わせると、絶望的なことばかり書いてあった。

彼はきっと良くなる!と何とか思い込もうとしたけれど、無理だった。

「おそらく何らかの障害が残る。そして最悪の結果もあり得る」

これが私の出した答えだった。変に専門知識があるのもやっかいものだ。

ただ、この時は妙に冷静だった。まだ自覚がなかった、といった方がいいかもしれない。


そしてもう一度彼に会いたくなった。

ICUに戻り、もう一度面会したい旨を告げる。

看護師さんは快く迎えてくれた。実際は迷惑だったかもしれないが。

本当に感謝している。

彼は先ほどよりも顔色が良いように見えた。

そっと腕や肩をさすり、声をかけた。

「○○、ナナドゴブだよ。わかる?」と声をかけると彼はかすかに頷いてくれた。

少しホッとした。

看護師さんに「今まで車椅子に乗っていた方だから、腕の筋肉は落とさないようにしないといけませんね。」と言われて少し安心した。

「彼には未来がある」と言われたような気がしたからだ。

でも相変わらず不安は拭えなかった。


その後面会時間ギリギリまでICUにいた。

”しばらくは病院通いになるな”なんて考えながら、病院をあとにした。

対面

××病院に着いた。

ここでふと思った。ICUには通常、家族しか入れない。

私は婚約もしていないただの彼女。入ることができるのだろうか。

とりあえず、ICUの入り口に向かう。

「あの・・今日入院した○○さんと面会できますか?」

看護師が訝しそうに「どのようなご関係でしょうか?」と訊いてきた。

「○○さんとお付き合いしています。」と答えると、「少々お待ちください」と離れていく看護師。

どうしよう、入れなかったら・・・と思っていると、「お待たせしました、どうぞ。」と中へ案内された。良かった。

手を洗って、マスクをしてICUへ入る。


個室のような場所に彼はいた。

酸素マスクをして点滴につながれて苦しそうに眼を閉じている。

「あまり刺激を与えない方がいいですね。」と看護師に言われたので、傍に座って見守っているだけにした。

両手は点滴を自己抜去しないようにベッドに拘束されている。

しばらくすると、急に右手で酸素マスクを右手で振り払い「吐く!!」と叫んで眼を見開いた。

慌てて看護師に報告する。彼は看護師が差し出した袋に吐いた後、少し楽になったのかさっきよりも表情が和らいだ。

しかし、右手で酸素マスクを取った際に点滴の針がズレてしまい、看護師に再度入れ直してもらった。「痛い、痛い」と叫ぶ彼。


私は、”あぁ吐いているのか、けっこうマズいな”とか”点滴を入れられるとわかるほどの意識レベルはあるのか”なんて考えていた。

職業上、ある程度の知識はあるためどうしてもそんなことを考えてしまう。

私はその後も彼の傍に座っていることしかできなかった。

1時間ほど経った後、ICUをあとにした。

あの日のこと

2015年11月28日。

今日からちょうど3ヶ月前。

私はこの日を一生忘れることができないだろう。

この日を境に私の生活は一変していくことになるのだから。


この日は土曜日で彼は仕事。私は休み。

私は夜に友人と会う約束があったので、それまで部屋でごろごろしていた。

午後3時過ぎ。知らない番号から私の携帯に着信が入った。

いつもなら知らない番号からの電話は取らないのに、その日は何故かすんなり取った。

彼のお父さんからだった。

「あ、ナナドゴブさんですか?○○の父です。実は○○が緊急入院しまして・・・」

その言葉を聞いた時、驚きはしたがそこまで深刻とは考えていなかった。

私は馬鹿だ。深刻でなければ、彼から連絡が来るはずなのに。


次の言葉を聞いた瞬間、私は凍りついた。

「くも膜下出血と脳出血で××病院のICUにいます。」

・・・はい?何で・・・そんなことに。

くも膜下出血、脳出血、ICU・・・私も病院勤めなのでそれがどれほど危険な状態なのかは嫌なほどわかった。

「大丈夫なんですか!?」思わず大声で訊いてしまった。

彼のお父さんも動揺しており、「今は何とも・・・また連絡します。」と言って電話は切られた。


それからのことは断片的にしか覚えていない。

とりあえず泣きながら両親と、今日会う予定の友人に電話をかけた。

父の「落ち着け!深呼吸して、とりあえず病院に行ってみろ」という言葉で何とか少し平静状態に戻れた。

そうだ、病院に行かなきゃ。

慌てて準備をして××病院に向かった。

私のアパートからはそんなに遠くない。

でも車を走らせている間は凄く長く感じた。

早く着け!なんて思いながら運転していた。