2015年11月29日。日曜日だったため、仕事は休み。
この日は昼から××病院へ行った。
部屋へ入ると酸素マスクから酸素チューブになっていた。
少しホッとした。
また、お茶を飲むこともできたと看護師さんが言ってくれた。
嚥下(飲み込む力のこと)機能は問題ないとのことだった。嬉しかった。
意識状態は昨日よりはっきりしているとのことだが、相変わらず眼は閉じていたので傍に座っているだけにした。
すると彼が眼を開けてこちらを見ている。驚いた。
「ナナドゴブ?」と私に訊く彼。いつもの彼の声だ。
「私が誰だかわかるの?ここがどこかもわかる?」思わず矢継ぎ早に質問してしまった。
「うん、わかるよ。」と彼。「俺、脳出血を起こして運ばれてきたんだよね?ここは××病院だよね?」「俺、職場のトイレで倒れたんだ。」と答えてくれた。
そして続けて、
「障害が重くなったら嫌だ。」「頑張って治す」「一緒に出かけられなくてごめんな」と彼は言った。
一番苦しいのは自分自身のはずなのに、こんな時まで人の心配だ。
本当に彼は優しすぎる。錯乱してもおかしくないのに。
私は手を握りながら、「その時はその時だよ。そんなこと気にしない。今は治すことが先決!!」と言った。彼は頷いた。
この日が一番、彼の意識状態が良かった。
私は今でも後悔している。
どうしてこの日、もっと話さなかったんだろう。
どうしてもっと彼の名前を呼んで、「大好きだよ、頑張って」と言わなかったんだろう。
この日が彼と会話らしい会話をした最後の日となった。