いつかあなたに逢いたい

2015年12月に6年付き合っていた最愛の彼を喪いました。
正直どう生きていったら良いのかわからないまま・・・今を過ごしています。

入院6日目(2)

病院に着いて急いでICUへ向かう。

そして彼と対面した。


彼は眼を閉じて眠っているように見えた。

ただ、耳元で声をかけても刺激を与えても眼を開けることはなかった。

しきりに左腕のみ動かしていた。

彼の腕はもう拘束されていない。

それは彼の腕はもう、点滴を抜去するほどの力もないということを意味した。


看護師から「主治医は他の患者の処置中ですので、もうしばらくお待ちいただいてもいいでしょうか?」と訊かれる。

了承し、彼の傍に座った。

彼の手を握り、さすりながら彼の名前を呼ぶことしかできなかった。


30分ほどそうしていただろうか。

看護師さんに呼ばれた。

そして主治医の先生の待つ部屋へと向かった。

入院6日目

2015年12月3日。

午前中は全く仕事に集中できなかった。

はやく彼の所に行きたい、はやく時間が過ぎてくれと思っていた。


午後3時ごろ。私に電話が入った。

「ナナドゴブさんですか?××病院のICUの師長です。」

もうこの時点で嫌な予感しかしなかった。

申し訳なさそうに師長さんは続けた。

「電話で言うのもどうかと思うんですが・・・○○さんの脳の腫れがひかないんです。」

「先程、ご家族には説明し延命治療を行うかどうかお訊きしました。」

「ご家族は希望されないとのことでしたが、彼女さんが希望されれば延命治療を行うとのことでした。」

「夕方5時くらいまでに病院に来ていただけたら、主治医の方から病状説明を行います。良かったら来ていただけませんか。」

この言葉を聞いた時、不思議とそこまで動揺しなかった。

『あぁ、ついにきてしまったか』最初に思ったことはこれだ。

「わかりました。すぐに向かいます」そう返事した。


延命治療をするかどうか訊いたということは、もう彼の命は消えかかっているということだ。つまり残された時間はもうない。

先輩と上司に事情を話し、早退させてもらった。

「落ち着いてから運転しなさいね。気をつけて」と言ってもらえた。


昼間だったので、道はかなり空いていた。

それなりにとばして病院へと急ぐ。

はやく、彼の所へ行きたい。そればかり考えていた。

入院 5日目(2)

この日、病院からの帰りに彼の部屋へ寄った。

彼から貰った合鍵を使って部屋へ入る。

今から思えば不法侵入かもしれない。


彼の部屋は、最後に一緒に過ごした時と何も変わっていなかった。

しばらく部屋に立ってぼーっとしていた。

彼は最後に部屋を出た時、その日に帰ってくることができなくなるなんて微塵も思わなかったに違いない。

いつもと同じ、普通の出勤だと意識すらしていなかったと思う。

それを考えると猛烈に悲しくなった。


「ねぇ、またこの部屋で一緒にご飯食べようよ。」

「今度は私が何でも食べたいものを作るからさ。」

そう無意識に誰もいない部屋に向かって呟いていた。

そんなことはもう無理だ、と頭ではわかっていた。


そしてその願いは結局叶わなかった。

彼が倒れるまで当たり前のようにできていたこと。

それはもう2度とできなくなった。


私はこの日、泣きそうになりながら彼のアパートをあとにした。