いつかあなたに逢いたい

2015年12月に6年付き合っていた最愛の彼を喪いました。
正直どう生きていったら良いのかわからないまま・・・今を過ごしています。

病院を出てから・・

アパートに戻る前、私は職場に立ち寄った。

明日から恐らく来られなくなる。病院へ向かうときも仕事を放り出してきたので、少し整理しておかなくてはいけないと思ったからだ。

守衛さんに特別に鍵を借り、部屋の中へ入る。

携帯を気にしながら、一時間ほど仕事をした。


その後、アパートに帰って家事を淡々とこなした。

そして、友人にも連絡した。彼がもう最期を迎えそうだと。

友人は驚き、電話の向こうで泣いてくれた。

私はその時は全く泣けなかった。むしろ淡々としていたと思う。


その後少しでも横になろうとベッドにもぐった瞬間、急に彼が最期を迎えるんだという実感が襲ってきた。

「嫌だよ、○○。私を置いて逝かないでー」と言いながら泣いた。

泣くタイミングがずれているような気もする。

それでもやはり疲れていたのか少しうつらうつらしていた。


そして2015年12月4日。午前2時。

私の携帯に病院から連絡が来た。

「○○さんですが、両目とも瞳孔が開いてしまいました。呼吸も少しずつですが弱くなっています。すぐに来てください。」

私は跳ね起き、病院へと再び向かった。

個室に移されて

待合室で待っている間、私は自分の両親に連絡を入れた。

彼はもういつ最期を迎えてもおかしくない、ということを伝えると両親は絶句していた。

ただ、何かあった時は連絡を入れてほしいとだけ言われた。

余計なことを訊かないでいてくれるのは本当にありがたかった。

多分、数日そっちに帰ることになると思う、と伝えるとわかった、とも言ってくれた。


処置が終わり、彼は個室に移された。

多分最期が近いからだろう。

私は傍に座って「○○・・」と声をかけ、身体をさすってあげることしかできなかった。

もちろん、反応はない。

看護師さんがきて、彼の状態をチェックする。

眼に光をあてて、対光反射を確認する。

光に反応して瞳が小さくなるかどうかみているのだ。

まずは右眼・・・彼の瞳は反応し小さくなった。

次に左眼・・・看護師さんが光をあてた瞬間、私は見てしまった。

左眼の瞳が右眼よりも拡がっていることに。

本当に最期が近いんだ、と実感してしまった。


彼のご家族もこの時到着された。

お父さん、お母さん、お姉さん。

私は慌てて礼をする。

「ナナドゴブさん、来てくれてありがとう」逆にお礼を言われてしまった。

延命治療はしないと選択しました、と伝えるとそうですか、と返事をされ、あとは全員で言葉少なく彼を見守る。


彼は挿管されたおかげで呼吸が一時、安定した。

ちなみにこの時の時刻は午後9時過ぎ。

彼のお父さんに「一度、戻りましょう。ナナドゴブさんも一度帰った方がいい。ずっとここにいるんでしょう。体力が持たないですよ。」と言われた。

本当はずっといたかったが、ご家族がそう言われるのでは仕方がない。

一度アパートに帰ることにした。


看護師さんから、「何かありましたらすぐにお呼びしますから」と言われたので、それを信じ、病院を出た。

最期に立ち会えないのは絶対嫌だったからだ。

言いたくなかった言葉

その後も私はずっと彼のそばにいた。

看護師さんの仕事の邪魔だったかもしれないが、どうしても離れられなかった。


彼の友人が帰ってしばらくした後、看護師さんが身体を拭きに来てくださった。

流石に邪魔になるので、少し離れる。

「終わりましたよ」という看護師さんの言葉に再び彼の所に戻る。

そして彼の顔を見た時・・・

今まで寝ているような顔しかしていなかったのに。


彼は下顎呼吸をしていた。

口を大きく開けてはーっはーっと懸命に酸素を取り入れようとしている。

呼吸をすることにも全エネルギーを注いでいる状態だ。

看護師さんも驚き「今、先生を呼んできますね。」と言い、その場を離れた。


私はそんな彼を見て思わず口走ってしまった。

一番言いたくなかった言葉を。

「もういいよっ......今まですごく頑張ったんだから、もう頑張らなくていい....!」


彼は10年近く前、転落事故で車椅子になった。

そこから頑張って頑張ってリハビリをして、人並みの生活を送れるようになった。

これから自分の幸せを掴もうとしていた時に、何でこんなことになってしまうのか。

どうして彼ばっかり・・どうしてどうして!!!!

............................................................................................


しばらくして先生が来られ、これから挿管すると言う。

これも延命治療のひとつといえばそうなのだが、呼吸をするのは楽になるとのこと。

それに彼の実家は病院から少し離れている。このままだと最期に間に合わないかもしれない。


処置が施されている間、私はICU前の待合室で待つことになった。