いつかあなたに逢いたい

2015年12月に6年付き合っていた最愛の彼を喪いました。
正直どう生きていったら良いのかわからないまま・・・今を過ごしています。

彼女としてじゃなくて

「延命処置をしますか?」
彼の主治医からの言葉。


2015年12月3日。
今でも記憶が薄れないあの日。
人工呼吸器をつけるかどうか。昇圧剤や強心剤を入れるのかどうか。
私はその選択を迫られた。
そして私は「全て望まない」と答えた。


たった6日間の入院生活の中で。
私は彼をどこかで冷静に(?)見ていた。
そして主治医の病状説明を受ける前日から、彼はもう助からないんじゃないかと半分思っていた。
右手が動いていない。
意識レベルも大声で呼びかけて開眼する程度。しかも注視もしない。
急激に状態が悪化している。
くも膜下出血の二次障害である脳血管攣縮と脳浮腫が進行しているのは明らかだった。
その二次障害がどれほど怖いものか、私は知ってしまっていた。
そしてこんなに短時間で一気に進むということは、それほど出血が凄まじいものだということも。


脳血管攣縮は脳の血管が縮んでしまうこと。
この縮み具合がひどいと脳に血液が行き渡らなくなり、脳細胞が死滅する。
脳梗塞と結果的に同じ状態になるのだ。
脳浮腫は文字通り脳が腫れること。
ただ脳が腫れるのは他の場所が腫れるのとはわけが違う。
腫れると脳の容積が大きくなるが、頭蓋骨に覆われて余計なスペースはないため腫れた脳は行き場を失い、正常な脳細胞まで押しつぶす。
そして更に腫れあがると生命維持を司る脳幹をも圧迫する。
彼もまさしくこの状態だった。
私の予想通りになってしまった。最悪だ。
こんな予想は当たらなくて良かったのに。


一度死んだ脳細胞は元に戻らない。
彼は脳に受けたダメージが大きすぎた。
延命処置をしたとしても、助かるかわからない。
苦しむ時間をのばすだけかもしれない。
助かったとしても植物状態、下手をすれば脳死状態。
意識が戻ったとしても右半身麻痺、全失語、情緒障害。


本当は泣き叫びたかった。
何としてでも助けて。主治医にそう言いたかった。
皆諦めても私は諦めない。奇跡だって起きるかもしれない。
そう素直に思えたら良かったのかも知れない。
私じゃない人だったら、彼女としてどんなことでもしてあげたのかもしれない。
でも私は違った。
客観的な視点から、そんなことをしても何の意味もないことを理解していた。
もうどうにもならない。そう思ってしまった。
彼の最期の時。
私は彼女としてじゃなくて、医療従事者の価値観で判断した。


延命処置をしなかったこと。
この選択に今も後悔はない。
ただ、正しかったのかと言われるとわからない。
自分は本当に冷めた人間だな、とたまに嗤いたくなる。

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