入院 5日目(2)
この日、病院からの帰りに彼の部屋へ寄った。
彼から貰った合鍵を使って部屋へ入る。
今から思えば不法侵入かもしれない。
彼の部屋は、最後に一緒に過ごした時と何も変わっていなかった。
しばらく部屋に立ってぼーっとしていた。
彼は最後に部屋を出た時、その日に帰ってくることができなくなるなんて微塵も思わなかったに違いない。
いつもと同じ、普通の出勤だと意識すらしていなかったと思う。
それを考えると猛烈に悲しくなった。
「ねぇ、またこの部屋で一緒にご飯食べようよ。」
「今度は私が何でも食べたいものを作るからさ。」
そう無意識に誰もいない部屋に向かって呟いていた。
そんなことはもう無理だ、と頭ではわかっていた。
そしてその願いは結局叶わなかった。
彼が倒れるまで当たり前のようにできていたこと。
それはもう2度とできなくなった。
私はこの日、泣きそうになりながら彼のアパートをあとにした。