入院 5日目
2015年12月2日。
この日は仕事が長引いてしまい、ちょっと遅くに病院に入った。
ただ看護師さんが配慮してくれて、面会時間より少し長く病院にいることができた。
この日は1時間近く、病院にいた。
病室に入ると昨日より覚醒状態が悪かった。
呼びかけても、手を握っても何も反応がなかった。
俗に『痛覚刺激』と呼ばれるものもやってみた。
手の爪の根元を、自分の爪でギューと押すのだ。常人だったら飛び上がるくらいに痛い。
・・・でも、何の反応もなかった。
看護師が耳元で大声で呼びかけてもダメだった。
試しにわき腹をくすぐりながら、「○○~起きろ~うりゃー!」とやってみた。
元気な時彼はくすぐられるのが苦手で「やめろーww」なんて言いながら逃げてたっけ。
ただこの時はわずかに眼が開いただけだった。こちらを見たが、焦点が全く合っていなかった。
多分、誰かがいることはわかっていても、私だとはわかっていないんだろう。
もう右手は全く動いていなかった。左手も時々は動かすが、握っても握り返してはこなかった。
昨日より状態が悪化しているのは、誰が見ても明らかだった。
『薬で落ち着かせているって言ってたから、きっとそのせいだ』
そう無理やり思い込もうとした。
今が一番悪い時期だ。これから良くなっていくんだって。
最後に「○○、また来るからね」というと微かに2回頷いた。
ただ声に反応していただけかもしれないが。
その後「●×△□・・・・」とうわ言を言っていたが、何を言ったか聞き取れなかった。
私はこの日、強く”彼の最期”を意識した。
必死にその考えを追い払おうとしたけれど、どんどん悪い想像だけが広がっていった。
その想像は・・・現実となってしまうのだけれど。