いつかあなたに逢いたい

2015年12月に6年付き合っていた最愛の彼を喪いました。
正直どう生きていったら良いのかわからないまま・・・今を過ごしています。

あ の 眼

※個人を特定できないようにフェイクはめっちゃ盛り込んであります



業務上、交代で医師の回診についてまわる時がある。
医師が自分の担当の患者を一人一人診て回り、今後どのように治療していくか患者とスタッフに告げる。
患者やその場におられる家族、スタッフもその場で疑問があれば医師に訊く。
チーム医療を行っていくうえで、回診はとても大切な時間だ。


そして今日。
ある先生の回診についた。
順番に患者のところをまわっていく。
そしてある個室の前に着いた。
私は緊張した。数日前、急に倒れて救急車で運ばれてきた男性の部屋だったからだ。
当院で何とか蘇生に成功はしたものの、今は人工呼吸器の装着をし昇圧剤を限界までいれている状態だ。
・・最期が近い、ということもすでに医師からムンテラ済み。
部屋の扉を開けると傍らに奥さんがおられた。
こちらをみてはねるように立ち上がられ、医師の発する言葉は一言も聞き漏らさない様にしているのがみてとれた。
「××という薬剤を使っていましたが、これは使いすぎると身体を痛めますので現在は休薬しています」
「どなたか会わせたい方がいれば、早めに会わせてあげてください」
そう医師は言い、奥さんは頷く。
私も一礼をし、部屋を出た。


そしてその時に合った奥さんの眼。
眼を見開き表面上は一生懸命現状把握をしようとし、何が最善策なのか必死で探っているように見えるけれど、その奥には虚ろな感じが広がっている。
そんな風に見えた。
言葉ではわかるけれど実感が伴っていない。
頭で考えることと心がバラバラになってまとまっていない。
そんな感じ。
当たり前だ。
倒れる直前まで普通に話していたのだから。
それが数時間で余命宣告されるなんて誰が思うだろう。


あの時と同じだ。
彼が倒れたと聞いて病院に行ったあの時。
必死に頭をフル回転し現状を把握しようとした。
自分が何をすべきなのか。どうするのか。これからどうなるのか。
必死でまとめようとした。
でも後から考えると後悔が尽きない。
あの時こうしていたら・・・って。
やっぱり冷静じゃなかったんだろう。
そして私もあの時は、奥さんと同じ眼をしていたんだろうか。


これからどうなるかわからない。
あの奥さんも私と同じような心情を辿るんだろうか。
そう考えると苦しい。
そしてあの奥さんの眼が脳裏に焼きついて離れない。

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