終わってしまった「幸せな時間」
「幸せすぎて怖い」
時々、彼が口にしていた言葉だ。
「どうして?」って私が訊くと、彼はこう答えた。
「俺、怪我した時自分の人生は終わったって思った。好きな仕事も諦めなくちゃいけなかったし、これから生きていく希望なんてなかった。でも今は別の場所へ就職もできたし、ナナドゴブとも出会えた。本当に幸せ。でもこの幸せがいつまで続くんだろうって思う時が時々あるんだ。」
私はその時、「何いってるの!これからずっとだよ。○○は人一倍苦労したんだから、これからは幸せにならなきゃダメなんだよ。」そう答えた。
彼は「ありがとう」って言って抱きしめてくれたけど・・・
私はこの時、本気でそう思っていた。
彼は人一倍努力した人。だからこれからは絶対に幸せになれるはず。
私もずっとそばにいて、彼と一緒に幸せになりたいって思っていた。
彼との永遠の別れがすぐ近くに迫っているなんて、考えもしなかった。
彼はどう思っていたんだろう。
なんとなく感じていたんだろうか。
でも彼も言っていた。
「結婚したい」「ずっと一緒にいたい」って。
彼自身、もっと生きたいと思っていたに違いない。
どうして彼を連れていったんですか。
どうして彼ばかりこんな目に合うんですか。
こんなにも彼は努力したのに、どうして報われなかったんですか。
どうしてこんなに早く、永遠に引き離されないといけなかったんですか。
今日も見えない”何か”にむかってそう問いかけている。