いつかあなたに逢いたい

2015年12月に6年付き合っていた最愛の彼を喪いました。
正直どう生きていったら良いのかわからないまま・・・今を過ごしています。

ICU症候群

ICU症候群というものがある。
ICU=集中治療室は高度な医療が必要な患者や、全身状態の綿密な管理が必要な患者、病状が重篤な患者が入る所だ。
そのため様々な医療器具やモニターなどがつけられる。
24時間集中的に患者を看ている為、一般病棟以上に日付や時間の感覚がわかりにくい。
そのため患者は自分はどうなるのかとパニックを起こし、せん妄などの精神症状が出る場合がある。
ICUで治療を受ける患者にある程度の割合で起こると言われている。
彼も入院期間が短かったが、ICU症候群に近い症状が起きた。


これは後から聞いた話だが、まだ意識レベルがそこまで悪くない時、彼は夜中に拘束を外そうと暴れ、大声を出していたらしい。
「ナナドゴブに会いたい!」「ナナドゴブを呼んでくれー!!」
そう彼は叫んでいたそうだ。
ICUの看護師が「今は夜中ですよ。彼女さんも寝ているので呼ぶことはできないですよ。」と何とか宥めると、「・・・すいません。」と言ってしばらくは寝たらしいが。


私はこの話を思い出すたび、嬉しい気持ちと切ない気持ちになる。


彼は車椅子になるきっかけになった事故の際の入院中の時も、長い間ICUにいたためICU症候群になったそうだ。
「何がなんだかわからなかった。身体もひどく痛かったし暑いのか寒いのかわからなかった。視覚的な情報も聴覚的な情報も断片的に入ってくるし怖かった。真っ暗な所に独りみたいな気がして無我夢中な時もあった。」
その時のことを私にこう話してくれた。


この時の彼も似たような状況だったに違いない。
不安で怖くて助けを求めていたんだろう。
そして私の名前を呼んでくれた。私を頼ろうとしてくれた。
意識が朦朧とし錯乱状態の中でも、私のことを忘れず私を求めてくれた。
そのことは本当に嬉しい。
私は彼に必要とされていた。心から愛されていたとわかるからだ。


でもそれに応えられていたかというと話は別だ。
ICUは面会時間が限られているため、ずっと傍にいられるわけじゃない。
実際1日あたりで会えたのは亡くなる前日を除いて平均40分程度だ。
ずっと傍にいることは無理でも、例えば仕事を休んでもう少しちょくちょく様子をみる事もできたんじゃないかと今になって思う。
数日くらい、無理をしてでも休めばよかった。
その時は入院がどれくらいになるかなんてわからなかったし、まさかいなくなるなんて思ってもみなかったから仕方がないのかもしれないけれど。
でも、すごく悔しい。


彼は真っ暗な中で助けを求め、どんな思いでいたのか。
そして何を思いながらこの世からいなくなったのか。
どれだけ怖かっただろう。寂しかっただろう。苦しかっただろう。
そう考えると本当に堪らなくなる。

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