伝えられなかった言葉
2015年12月4日午前4時32分。
「ご臨終です」という言葉と共に、彼はこの世からいなくなった。
彼がいなくなる直前、無我夢中で「大好きだよ!!」と叫んだことは覚えている。
でも一緒に過ごせて嬉しかったこと、感謝の気持ちは伝えることができなかった。
もうそれを言ってしまったら、本当に最期のような気がしたから。
主治医から病状説明を受けた後、手を握りながら彼の傍にいた。
その時から何度も「ありがとう、幸せだった」という言葉が浮かんでいた。
でも何度も頭の中で打ち消した。
病状的にはもう助かる見込みはないと頭では理解していても、受け入れることができていなかったのだと思う。
その言葉を言ってしまったら、彼がいなくなることを認めてしまうような気がしてどうしても言えなかった。結局最期まで。
今、とても後悔している。
彼の肉体があるうちに、どうして伝えなかったんだろうって。
今はその言葉を、写真やお墓に向かって言うことしかできない。
いつか彼と再会できたら「ありがとう、幸せだよ」って伝えたい。
「だった」じゃなくて現在進行形で伝えたい。