指輪(2)
彼に買ってもらった指輪はいつも小指にはめていた。
デートの時につけていたら、彼は嬉しそうに私の左手を見てくれていた。
そして、「ありがとう、いつも身につけていてくれて」と言って笑ってくれた。
ある日彼が私の手を見ながら、「指輪、薬指にはつけないの?」と訊いてきた。
私は恥ずかしながら指が太い。
「いや、この指輪は小指のサイズにぴったりだから、薬指には入らないよ。」と答えると、彼はしばらく考えて、こんなことを言ってきた。
「わかった。じゃあ、プロポーズの時までに薬指のサイズ調べておく。その時にピッタリのサイズの指輪をプレゼントする。」
その言葉を聞いた私の顔は多分、相当真っ赤だったに違いない。
彼も「あー、ナナドゴブが照れてるー」なんてからかってきたくらいだし。
私は「どうやって調べるんだよー。私でさえわかってないのに。」なんて言ってしまったっけ。
彼は「ナナドゴブが寝ている時に調べる!」なんて言ってたな。
私は更に照れ隠しで、「絶対無理だね~」なんて言った。
多分顔は笑ってたけど。
プロポーズ、彼からされてみたかったな。
彼も「仕事をこなせるようになって、自活できて、堂々とナナドゴブのご両親に挨拶できるようになったらちゃんとプロポーズするから。」って言ってたな。
最後にあった時、来年は結婚にむけて話を進めようって言ってたから、彼が生きていたら、もしかしたら近々プロポーズされたかもしれない。
そんなことを考えると切なくなる。
そして私の薬指はもちろん今も指輪ははまっていない。
これからもすることはないだろう。
ずーっとずーっと先、彼にいつか会えた時のために私の薬指は空けてある。