彼の最期の眠りと私の願い
私はもともと低血圧のせいか、朝に弱い。
覚醒まで時間がかかるし、寝起きですぐ食事を摂ると気持ち悪くなってしまう。
対して彼は寝起きがすごく良かった。
朝、目覚ましがなればすっきりと起きることができたし、すぐに活動を開始できた。
すごく羨ましかった。
どんなに熟睡していても、私が「○○~」と名前を呼んだらすぐに起きたっけ。
いきなりパッチリ目を覚ますから本当にびっくりした。
そして「ナナドゴブ♪」って笑って言って、ギュッと抱きしめてくれた。
逆に彼が早く起きた時、寝起きの私にちょっかいをかけて私が素で怒った時もあったな。
「あの時のナナドゴブは本当に怖かった・・・」なんてびくびくして言ってた。
ちょっとかわいいと思ってしまった。
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納棺する前、斎場で布団に寝かされている彼はまるで寝ているみたいだった。
少し2人きりにさせてもらえ、私は何度も彼の名前を呼んだ。
顔を触ったり、手を握ったりしながら。
でも彼からは何の反応もなかった。
目を覚ますことも、「ナナドゴブ♪」って呼んでくれることも、抱きしめてくれることもない。
『ねぇ、いつもだったら名前を呼んだら起きてくれるじゃない。起きてよ、ねぇ起きてよ。私の名前を呼んでよ。抱きしめてよ。』
そんな叶わない願いを思いながら、彼の名前を呼んだのを覚えている。
その時、無意識に泣いていたと思う。
あの時のことを思い出すと今でも辛くなるけれど、絶対に忘れたくはないな。
いつか、もう一度名前を呼んでもらえて抱きしめてくれる時がきたらいいな。